スタートアップの功罪 ~人を雇うということ~(前)
企業形態の一つとしての「スタートアップ」の表現ですが、文字どおり「始めた」「起業した」という意味であるなら、ある程度の賞味期限があるはずでは、と考えていたのですが、どうもその時間軸的な考え方だけではないようです。
正直ベンチャーとの違いなどもはっきりとは理解していませんが、それでも昨今、ツイッターアカウントのプロフィール欄で「スタートアップで採用担当しています」などの文字を目にする機会が増えてきたなぁという印象があります。
現在、世界を席巻しているGAFAもそうですし、更に言えば昔ながらの日本的大企業であっても、その多くは起業時にはいわゆるスタートアップだったはずなので、先見の明をもって新卒時の就職先としてスタートアップ企業を選択する学生が少なからずいることについては理解できます。
ただ、直接的なプロフィットを生まない教育研修に多くの時間と費用を割ける点や、大所帯の組織の一員としての経験を得られる点など、少なくとも新卒時のファーストキャリアの選択としては、(自身が自由に選べる状況にあるのなら)システムやノウハウが蓄積されている大企業を選んだ方が、後々のキャリア上の可能性も広がっていくことと考えます。
就職先としてスタートアップ企業を志望する、あるいは就活途中から方向転換して志望し始める学生は、近視眼的にメリットしか目についていない場合も多いので、上述のような説明もして、本人の意思決定の際の参考にしてもらいます。 (続)
格言、のようなもの
「若い頃の『この世の終わりか』と思うほどの挫折は
実はそれほどでもないことが多く、
年を重ねてからの『またいつでも』と
漫然と見送ったチャンスは
二度と訪れないことが多い」
これは以前に私自身が実感した思いを格言(?)めいた形式で表したものですが、実際のキャリアカウンセリングの現場でも、同様の趣旨を言葉にすることも少なくありません(主に前半部分)。
特に学生や若年者のクライアントで、年長者から見ると「過ぎてしまえば、そんなに大げさなことではなかったなぁ」と思えることを不安に感じている方の場合には、自身の体験談を交えながら紹介することがありますが、その場合でも
(1)その不安は些細なものなのかを安易に決めつけないこと、及び、
(2)カウンセラー側(私)の自分語りが主にならないこと、
の二点は常に留意しています。
「他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる」
様々な場面で目にするこの格言が、交流分析(TA)で有名なエリック・バーン氏によるものだったと知ったのは、キャリアコンサルティングの勉強を始めてからでした。
最後にもう一つ、私自作の格言のようなものを。
「格言の類は、改めて言われると
『当然ではないか』と思うことも多いが、
それを日常いかに忘れてしまいがちかを
気づかされることもまた多い」
ナビサイト営業担当の方の思い出(後)
前回のブログで触れた2名の営業担当の方のうち、今回は契約に至った方の営業担当の方について記したいと思いますが、こちらも前回言及した方同様、とても有能な人でした。
初めてナビサイトの利用を考えている当方の疑問に対してレスポンスよく回答をくれる、年齢は若いのにフレンドリー、かつ、失礼にならないコミュニケーションが取れる、など、将来はこの会社を背負って立つのではないか(ただ、満足できなくなって彼自身で飛び出す可能性もあるな)と感じさせるには十分な人物でした。
昨年某大学のキャリアセンターで学生面談をしていた時に、すぐ近くの席でそのナビサイト会社の方と大学職員が打合せをしているのを見て、そういえば彼は今どうしているのだろうと思い出し、15年前にもらった名刺のアドレス(途中で社名変更していたのですが、アットマークより前は変わっていないだろうとの推測で)にメールを送ってみたらすぐに返信が来て、大変懐かしがってくれました。
15年前に社員数400人程度だった先方の会社は、今ではグループ全体で約1万人になったそうで、彼は新卒担当部署から、新規事業の立ち上げ、それを軌道に乗せた後、現在はアスリートのデュアルキャリア(競技と仕事の両立)・セカンドキャリアを支援する部署を率いているそうです。
当時の私の勤務先の営業担当は、契約後暫くして彼から若手に引き継がれたのですが、私の在職中の最後の担当になった若い女性の新入社員が今でも在籍していて、現在育休中、などという話を聞くと、月日の流れをとても感慨深く感じます。
ナビサイト営業担当の方の思い出(前)
約15年程前、当時私は某企業の人事部で新卒採用担当だったのですが、その企業では私が中途で入社する前まで、採用告知からエントリー管理まで、すべて自社で手作業で行なっていました。
ところが、私の入社とほぼ同時期に上場したこともあり、知名度が上がって、エントリー数が数倍にも増加して、とても手作業では追いつかない作業量になり、求人ナビサイトの使用に踏み切った(=出費を渋る社長を説得した)のでした。
その頃は、大手から新興企業まで、代理店まで含めると毎日のように多数のナビサイト関連会社が営業に来ていましたが、最終的に2社を候補として絞り込みました。
知名度や提示金額では明らかに有利な大手1社と、その点からはどうしても不利なもう1社の2社でしたが、私が迷った理由として、後者の営業に来た方の知識量、理路整然とした説得力溢れる話し方、それでいて押しつけがましいところのない営業スタイルに、とても魅かれたということがありました。
もちろん最終的に決定した前者の営業の方も、勝るとも劣らず素晴らしい方でしたが、今回はご縁のなかった後者の営業の方も「今後は大活躍されていくだろうな」という予感めいたものを、当時感じました。
その方は、現在はそのナビサイト運営企業内の就職情報研究所所長になられたようです。
山あり、谷ありの本題
前々回は「山あり、谷あり、モハメドアリ」から脱線してしまいましたが、本来このタイトル(モハメドアリは無し)で書きたかったことに戻します。
先日ツイッターで
本当によくない
— 境野 今日子 (さかいの きょうこ) (@kyokosakaino) 2020年1月12日
大学の就活セミナー、登壇する卒業生が
転職経験なしの大企業一筋ばかりだった
レールに乗った生き方しか教えないから
"いい企業"に行けなかった学生が
「人生終わった」などと言う
就活全落ちでも今活躍してる人や
就活らしいことせずに
社会人になった人を、
もっと紹介すべきよね
上記のツイートを読む機会があり、一字一句違わず同感したのでした。
私は昨今多く見受けられるようになった「大企業の内定蹴ってベンチャー選んだ」という、ある種の時代先取り的な優越感(?)が滲み出てしまっているような選択には、全面的に賛成ではありません。
そうかといって、右肩上がりの経済成長を前提とした従来のビジネスモデルが崩壊している現代において、旧態依然とした大企業志向を奨励する気もありません。
大企業かベンチャーか、転職すべきか否かという選択の是非の論点ではなく、「大学の就活セミナーに登壇する卒業生」が「転職経験なしの大企業一筋」の人ばかりでよいのか、という点に大いに頷いたのでした。
もちろん大学側にもステークホルダー向けに思惑があるのは承知していますので、俗に言う“いい企業”で活躍している卒業生の登壇には大きな意義があるものと考えていますが、それだけではないのです。
多様な選択肢があること、結果が芳しくなかった場合でもそれが人生におけるすべてではないこと、首尾よく第一志望に内定しても、実際は入社してみないとわからないことばかりなこと等、そのような情報提供やロールモデルの紹介をし、就活生をフォローしていくことが大学、キャリアセンターに求められる、もう一つの大きな側面ではないでしょうか。